いちごちゃん
Come ti chiami?
イタリアで暮らすもっと前、2003年に1ヶ月だけ語学留学に来ていた。
まだまだ知ってる単語も少なく、挨拶などのお決まり文句をかろうじて覚えた頃だった。
初めて訪れたジェラート屋でのこと。
いつものように、一番小さいカップで2種類の味を注文。
ジェラートをすくいながら、陽気な店員さんは言った。
「Come ti chiami?」
語学学校で習ったお決まり文句だ。
即座に『名前を聞いているだな』と思い、
すくったジェラートの名前を日本語で答えた。
「いちご!」
しかし店員さんはこう返してきた。
「やぁ!いちご!僕はマルコ。よろしくね」
間違えた…。聞かれていたのは『私の名前』だった。
日本の習慣では、会って1分足らずの知らない人から、自分の名前を聞かれることなんてないから。。
にわか『いちごちゃん』は、訂正する語学力もなく、この人と二度と会わないことを願って、そそくさと店を出ることにした。何も知らないマルコは満面の笑みで見送ってくれた。
「いちご!またおいで!」